研究シーズ集

人工知能研究推進センターにおける研究 -知能情報分野-

ものづくり(情報・電気)

研究者 工学部 電気電子・情報工学科
寺田和憲 等 准教授

研究概要

知能情報分野では、人の知識や、認識、意思決定過程を数理モデル化し、科学的な知識として蓄積するとともに、工学的な応用を行います。人の意思決定は様々な情報に基づいてなされます。意思決定に影響を与えるのは、暗黙的、明示的に蓄積されている知識です。人それぞれ意思決定が異なるのは知識とその処理過程が異なるからです。また、人が完全に合理的であったとしても、目的が異なれば出力される行動は異なります。この分野では、機械学習や統計学、心理学を用いて人の知識、認識、意思決定のモデル化を行います。正確なモデルが得られれば、人の購買行動を完全に予測ができるかもしれません。データサイエンス分野との違いは人の思考の偏りをモデル化しようとする点、機械学習・深層学習分野との違いは教師データのあり方そのものを検討する点です。

研究内容

 人の持つ知識は視覚や聴覚、触覚、内受容感覚などの感覚器官を通じて入力されたセンサ信号に対して統合と取捨選択(重みづけ)の処理を行った後に形成される抽象表現(概念)と考えられます。人は抽象表現に対して記号(ラベル)を与え、記号を操作することで思考したり、記号を発話したり記述したりすることで他者に知識を伝達します。抽象表現を持つことの利点の一つは「同じ」を作り出せることです。人は細かい違いに目をつぶり(特徴の取捨選択をする)同一化することで、内観の伝達を可能にしています。また、抽象表現間に因果を仮定することで推論を可能にしています。私達の研究室では、人と同等の知能を実現するという工学的目標を設定し、心理学、統計学、機械学習、進化シミュレーションなどの手法を用いて、抽象表現を構成する特徴軸やその情報処理過程を明らかにしようとしています。
 図1は人の持つエビの概念を具体化した画像です。この研究では、エビの形状と模様を表現する多次元ベクトルを主成分分析によって4次元に圧縮し、心理物理学で用いられる調整法によって4次元空間上で実験参加者にエビ概念を探索しました。
 近年急速に発展した深層学習は、データとラベルを与えるだけで、神経回路内に概念を学習できる強力な方法です。図2に示すように、人の持つサルの見え方のモデルを深層学習とベイズの公式を組み合わせることで構成し、頑健な個体識別と動画像中の追跡を可能にしました。
 社会生活では意図(心)を読む、空気を読むことが必要不可欠ですが、人の意図推論の計算モデル化も行っています。具体的には、人が状況と意図が与えられた場合に出力される行動の出力確率を知識として持っていると仮定し、ベイズ推論によって、意図を推測していると考えます。例えば、二人で協力して達成したプロジェクトの報酬が一方だけ高かった場合、報酬の高い方が図3左の表情を出力するのと右の表情を出力するのでは、そこから読み取れる意図は異なってきます。左の場合は悪意を感じるでしょうし、右の場合は申し訳なさを感じるでしょう。私たちは実験によって、人がそのような知識を持っており、ベイズ推論によって意図を推測していることを確かめました。 

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資料・ポスター

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キーワード

知能情報、知識、認識、意思決定、暗黙知、機械学習、統計学、心理学、モデル化

出展した展示会

  • メッセなごや2019