新規の高活性呼吸鎖複合体I 阻害剤 ペタシンによる腫瘍増殖・転移阻害効果
ライフサイエンス(創薬)
研究者 |
連合創薬医療情報研究科 平島一輝 併任助教 |
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研究概要
活発に増殖・転移するがん細胞は、正常細胞と比べてより多くのエネルギー(ATP)や細胞の構成要素(核酸とタンパク)を合成する必要があるため、大量のグルコースやグルタミンなどの栄養素を取り込み代謝する必要がある.これらの代謝反応はミトコンドリアの呼吸鎖複合体I(ETCC1)に支えられているため、ETCC1 の特異的阻害によって効率的にがんの増殖と転移を抑制できると考えられる.しかし、従来の阻害剤は、メトホルミンのように活性が極めて弱いか、ロテノンのように毒性が強い物質が多く、がん治療に応用できる物質は少なかった.我々の研究グループは、植物抽出物スクリーニングから新しい高活性呼吸鎖複合体I 阻害剤としてペタシンを同定した.ペタシンは極めて高い呼吸鎖複合体I 阻害活性を持ち、がん細胞が依存するエネルギー代謝を強く抑制することを明らかにした.複数の異種移植・同種移植マウスモデルによる動物実験において、ペタシンは腫瘍の増殖と転移を有意に阻害した一方で、体重や血液検査上の明らかな副作用は認められなかった.
活用分野・用途・応用例・商品例・事業化のイメージなど
ペタシンは、既存物質とは異なる化学構造を持つ新規呼吸鎖複合体I 阻害剤であり、がん特異的代謝を標的として副作用を抑えつつ腫瘍の増殖と転移を阻害する.また人工合成も可能であるので、今後の創薬展開も容易である.想定される応用分野: がん治療、転移阻害、がん予防
資料・ポスター
キーワード
ペタシン、ふきのとう、呼吸沙複合体I阻害剤、腫瘍増殖・転移阻害効果
出展した展示会
- 第3回ファーマラボEXPO
- 中部地区医療・バイオ系シーズ発表会2021