株式会社岐阜多田精機

コーディネーターのサポートで国の競争的資金を活用
~最新の加飾技術でデザインの可能性を広げる金型専門メーカー~

低コストを可能にした加飾の新技術

世界の自動車産業を牽引してきたといっても過言ではない昨今の日本企業。しかし、韓国の自動車メーカー・ヒュンダイの「ソナタ」が、高いデザイン性を武器に注目を浴びたことをきっかけに、世界市場を制するための重要な課題として「加飾」が急浮上。日本メーカーは、高級感ある内外装の実現へ向け、新たなデザインを模索しはじめた。

加飾には、水圧転写やフィルム貼付など様々な方法があるが、複雑な曲面ばかりでできている自動車パーツには、フィルムの模様が自然に見えるよう貼り付けることはまず不可能。また、ステアリングホイールなど全方向に加飾したい製品には、木材を成形品に入れるなど特別な製造ラインを要するため、どうしてもコストが高くなってしまう。

「我々は金型の専門メーカーですから、もともとある技術を生かして“金型に模様を転写したらいけるんじゃないか”という着想はありました。金型で模様まで作ってしまえば、低コストとデザイン性が両立できると考えたのです」と多田憲生専務。「しかし、シミュレーションソフトの挙動が予測できなかったため、岐阜大学の井上先生に解析をお願いすることにしました」。こうして岐阜大学との共同研究がスタートしたのだ。

頼りになるコーディネーターのサポート

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中小企業の高度なモノづくりに対して支援する、経済産業省のサポイン事業。この支援事業を最大限に利用して、新技術の開発・事業化を図ってきた同社は、今回が二度目のサポインとなる。参加者はすべて、多田専務とつながりの深い砂田博コーディネーターがセッティングした。「金型に関して我々は専門家です。ですから、新たな視点を獲得するため、分野違いの先生から科学的なアドバイスが欲しいと思っていました。

でも、どの先生がどの専門かはわからないので、砂田さんにすべて頼りきりでしたね」と多田専務。「紹介いただいた岐阜大学の先生は事業化ということに非常に理解があって、スピーディーに研究を進めることができました」と全面的に信頼を寄せる。

3年で事業化するというサポインの目標は厳しく、初年度には社員たちが夜通し作業したこともあるという。大学とは、3か月から6か月に1度研究会を行い、検証を続けた。「二度目のサポインということで、私自身流れが分かってきたこともあり、社員全員に開発に関わらせることにより、人材育成もかねて取り組んできました。産学連携で得た数々の知見は、我々にとってかけがえのないもの。生き残りをかけて、これからも独自性を打ち出していきたいですね」。

世界が認める技術を、岐阜のモノづくりの現場から

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「これを見てください」…目の前に並べられたのは、木目や波紋が美しいサンプル用加飾パネル。これが、今回、研究開発された“多色成形金型”だという。レーザーで微細な模様の溝を彫って作った成形品に樹脂を二層以上流し込み、3D風の立体的な模様を作っている。厚みの違いによって光の透過率に差が出ることから、色調が複雑に変化するのだ。

この技術を使えば、サンプルにあるような幾何学模様だけでなく、写真画像の再現だって可能になる。「しかも、コストは従来品に比べて1/10~1/6です。この技術は世界でも初なのですよ」と多田専務。

この研究は現在、新しい化合物の特許取得を終え、あらゆる自然環境でも対応できるかどうか野外での試験が行われている。商品化に至るまでは、まだまだ数年かかるだろう。ただ、近い将来、間違いなくこの化合物が世界中で新しい扉をいくつも開いていくはずだ。

その技術を待ち望んでいたのは、自動車メーカーだけではなかった。「住宅や家電、AV機器メーカーなど名だたる大企業が、見学にやってきたのです。暮らしの中にある様々なものに、この加飾技術が生かされるようになるのも、もうすぐ。今後も研究を積み重ねていきたいですね」。

※2014年8月取材(内容や役職等は取材当時の内容となります)

企業からのメッセージ

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企業の規模が大きいとか小さいとかは関係ありません。大学にはこれまでに蓄積した知見をたくさん持っていますので、共同研究で得られることは大きいと思います。我々がラッキーだったのは、信頼のおけるコーディネーターに出会えたことです。そして、同業でも異業種でも伸び盛りの会社に見学に行ってみるといいですよ。ヒントになることがあるかもしれません。(多田専務)

産学連携コーディネーターから

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研究開発内容の具体的な相談からその実施に係るフォーメーションの構築及び競争資金の活用等に対するコーディネートを円滑に行うためには、企業との信頼関係構築がポイントです。㈱岐阜多田精機さんとは、長年の企業訪問等を通じてこれらの関係が築かれていたので、今回の成果に結びついたものです。産学連携コーディネーターは、企業ニーズと岐阜大学の技術シーズの紹介・橋渡しが役割と思いますので、これからも、企業の方と連携しながらのコーディネーター活動を推進しますので、お気軽にお声掛けください。(砂田産学連携コーディネーター)

株式会社岐阜多田精機 会社概要

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プラスチック射出成形、ダイカスト鋳造用金型の設計製作および生産性向上のための研究開発を行っております。 樹脂製品、ダイカスト製品を安定して生産できるように配慮された設計で、意匠形状を含む製品や、複雑な機能部品など多岐にわたった金型を製造しております。