心肺蘇生訓練キットの共同開発

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心肺蘇生キット「スクーマン2」

アテナ工業株式会社

本社:岐阜県関市下有知5601番地1 資本金:4億5千万円 従業員:285名

岐阜大学 大学院医学系研究科救急・災害医学分野
小倉真治 教授/高次救命治療センター長

共同研究に至ったきっかけ

アテナ工業:本社所在地の関市は、平成20年に開始されたある先進的な取組みで全国的に注目されていました。実技を伴う救急救命講習を、中学1年生全員に1人1個の簡易教材を支給して行うというものです。当時の使用教材は海外製の物で、その頃にもっと安価で性能の良い物があれば、この活動がもっと広がると思うとの声があることを知り、未知の分野でしたが弊社で作成にチャレンジする事を決めました。ただ未知ゆえに性能追及の方向性に迷っていた時に、弊社社長宅の向かいに住まわれていた小倉教授に相談をさせて頂いたのが岐阜大学との共同開発のきっかけです。初めての共同開発でしたので、産官学連携推進本部にはとてもお世話になりました。

共同研究の内容・成果

アテナ工業:今回の製品開発で満たす条件は、①正しく胸骨圧迫が学べること、②安価で提供できることでした。①でとりわけ重視した事は、胸骨を押した感触を出来るだけ再現する事です。既存製品には感触はリアルですが、部品点数が多く高額なもの、安価ですが感触が遠い物などがありました。その為弊社では全く別の方式でのリアルな感触の再現を模索しました。教授から有効な胸骨圧迫の圧力データ資料を頂き、肋骨の形状を参考にアーチ形状の樹脂製模擬胸骨を用意しました。教授や研究室の先生に実際に試して頂き、感想を伺いました。部品をモデリングデータ解析し、圧迫時にアーチ形状にどの様に負荷が掛かるかを検討しました。②の安価で提供する為には、当社の得意分野であるシート成形品で胸部や心臓の位置などを表現し、正しく圧迫する位置を示しました。また、正しい深さまで圧迫出来ていると音が出る工夫や、製品の箱の内側面を利用し、色分けによって目でも深さが確認できるようにしました。共同研究開始後に、実は関市の取組みは小倉教授が提案された事と知りました。不思議なご縁を感じつつ岐阜大学および小倉教授のご協力で全くの専門分野外でありながら、今では日本循環器学会の市民講座でも使用される製品を生み出せた事に感謝をしています。

コメント

ご担当者様:アテナ工業株式会社 開発センター 宮嶋 謙二様

最初は、分野違いのプロジェクトに大きな不安がありました。しかし、小倉教授から救急救命における心肺蘇生の大切さ、またそれを大勢の人々が学ぶことの大切さを伺い、製品を造る意義を改めて感じ取組みました。試作の改善ポイントを何度も分かり易くアドバイスして頂きました。製品の模擬胸骨部分の感触を確認して頂き、ついに【合格です。】と仰って頂いた時は、感動と感謝の気持ちが溢れてきました。

岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野 小倉真治 教授/高次救命治療センター長

今回の共同開発の主なポイントは、我々実際に使う立場からの要求を、どこまでコストを削りながら具現化できるかというところにありました。よくある言葉で言えば、シーズドリブンではなくニーズドリブンであるということです。 我々の要求は明確でした。実際に心臓マッサージ(胸骨圧迫)を数多くやってきた私の手の感触をどこまで製品に反映させることが出来るかというところです。コストとの戦いもあり、担当技術者には苦労をしてもらいましたが、社を上げての支援もあり、最終的に他では類を見ない製品が出来ました。その瞬間の喜びは言葉には表せません。いい仕事を出来ました。

メディア掲載

▽NHK総合 「ほっとイブニングぎふ」 2012年9月28日
▽東海ラジオ 「ニュースファイル」 2012年12月22日
▽中部経済新聞 2014年5月22日
▽岐阜新聞 2015年6月23日
▽その他新聞掲載多数