物理ゲル性能を付与した次世代コンクリートの共同開発

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株式会社安部日鋼工業

岐阜市六条大溝3丁目13番3号 資本金:3億円 従業員:519名(2020年6月30日現在)

岐阜大学工学部化学・生命工学科 物質科学コース
木村 浩准教授

共同研究にいたったきっかけ

2019年01月に開催された岐阜大学ラボツアーに参加し、「クレイ粒子水分散液」材料技術が展示されているのを目にしたところ、直感的に「これだ!」と感じ、すぐさま木村浩准教授にアプローチしました。 クレイ粒子水分散液は、水に粘土(クレイナノシート)成分を加えたもので、流動刺激の有無によってゾル(液体状態)とゲル(固体状態)を往き来し、「物理ゲル」と呼ばれます。その物理ゲルが持つ特殊な性質を、フレッシュコンクリート(硬化前のコンクリート)の性能向上にも応用できるのではないかと考えたのが、木村准教授との共同研究の始まりでした。

共同研究の内容・成果

土木建設の現場で型枠などに流し込むコンクリートは、流動性が低ければ充填作業が難しく、流動性が高いものは高価であり材料分離しやすいことが課題でした。また硬化後のコンクリートの耐久性を高めるために、気体や液体が侵入しにくい緻密な硬化体とする必要があります。私たちが開発した次世代コンクリートは、粘土鉱物であるクレイナノシートをコンクリートに少量混ぜ込みます。すると、静置すると形状を保持し、振動を与えると柔らかくなるという物理ゲルの性能が発現します。固まる前からある程度形状を保持して自立しつつも充填しやすく、コンクリート工事の生産性が高まります。また、クレイナノシートの添加量や振動条件を変えることで、セメントと水の配合を変えることなく流動性を高め、柔らかさを調節できることも特徴です。これにより、構成成分を均一な状態で充填できるようになり、材料分離が起こりづらくなります。さらに、クレイナノシートはコンクリート中の余分な水を吸着し、硬化後も内部から外へと緩やかに水分を供給するため、組成物が緻密になって耐久性も高まります。物理ゲル性能を付与した次世代コンクリートは、これまで建設業界が抱えていた課題を解決できると期待しています。そして、道路や橋梁、建設物といったインフラの長寿命化にも大きく貢献できると考えています。

コメント

ご担当者様:株式会社安部日鋼工業 技術公務本部 技術開発部長 宮島朗様

木村先生に出会うまでは、業界内の狭い世界で課題を解決しようと模索を続けてきましたが、岐阜大学の交流会に参加したことで、従来にはない斬新な発想のコンクリートを開発できました。今後はクレイナノシートの最適な添加量などを検証し、普及に向けたPR活動にも力を入れていきたいと考えています。

岐阜大学工学部化学・生命工学科 物質科学コース 木村 浩准教授

岐阜県内の民間企業と共同で、業界の新たなスタンダードになりうる画期的な次世代コンクリートを開発しました。岐阜県をはじめ東海地方には、株式会社安部日鋼工業様などのような高い技術力をもつ民間企業が数多くあります。大学のシーズとこれら民間企業の技術が融合すると、非常に優れた工業製品ができることを実感しました。今後はこの次世代コンクリートの技術を国内外に普及させ、インフラの長寿命化などへの貢献を目指します。

メディア掲載

日刊建設工業新聞2020年2月28日 / 中部経済新聞2020年3月2日 / 科学新聞2020年3月20日 / 建築技術5月号2020年4月17日