滑り止め床用コーティング剤の共同開発

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滑り止め床用コーティング剤

株式会社リンレイ

(本社:東京都中央区銀座4-10-13) 資本金:1億円、従業員:500名(連結)

岐阜大学 応用生物科学部
神志那弘明 准教授

共同研究にいたったきっかけ

株式会社リンレイ(山田様): 元々弊社では、本連携の端緒となった「滑り止め床用コーティング剤」の開発を進めており、ここに臨床獣医学的な評価を得られれば、さらなる商品価値向上が期待でき、最終的には当商品の命題でもある『人と愛犬のより良い共生環境創造』に寄与できるのではないか、といった議論を並行して行っておりました。私は岐阜大学の卒業生で、友人から常々岐阜大学の獣医学科の優秀さは説かれていましたので、担当を志願し、産官学連携推進本部を通じて、昨年度より神志那先生との共同研究に至りました。その過程では同学部の鬼頭先生にも大変お世話になりました。(「産学連携経験者インタビュー」より転用)

共同研究の内容・成果

株式会社リンレイ(山田様):近年、犬の室内飼育と比例して「フローリングでの滑り」に起因する骨折や脱臼、ねん挫等の関節疾患が増加しています。そうした状況に対してフローリングを滑りにくくすることで予防するというのが当商品のコンセプトで、実際に床での滑りが犬の心身にどのような影響を及ぼすか、国内初となる臨床獣医学的なアプローチでの研究をしています。具体的には歩様解析試験やストレステスト、飼い主アンケート等、多角的な視点で進めています。 歩様解析試験において、関節または神経の疾患を持つ犬(10頭)の歩様を比較解析した結果、塗布したフローリングでは滑らないか、もしくは滑る回数が減少することが明らかになりました。このことから同商品が疾患犬のフローリングにおける滑りを防ぎ、歩様改善に寄与することが分かりました。 足・腰の関節疾患や神経の疾患は高齢になるにつれて発症しやすくなることから、高齢犬の疾患対策になることが期待できます。(「産学連携経験者インタビュー」より転用)

ご担当者のコメント:株式会社リンレイ 総合企画開発部 山田貴之様

本連携は弊社にとってワックスやコーティング剤の新たな価値提案の第一歩となる極めて重要な取組みで、それと同じ熱量で取り組んで頂いている神志那先生はじめ岐阜大学に深く感謝すると同時に、僭越ながら卒業生冥利に尽きる思いで一杯です。今年度はより一層の成果創出を期し、更なる取組み強化を図って参る所存です。

岐阜大学 応用生物科学部 神志那弘明 准教授

最近は犬や猫は伴侶動物と呼ばれ、家族の一員という位置づけになりました。ほとんどの場合、生活環境は人と同じように家の中です。最近では床材としてフローリングが使われているお宅が多いですが、はたしてフローリングは動物にとって過ごしやすい材質なのか?と考えると、きっと快適なはずはない!と考えたわけです。そういう意味で、「滑り止め床用コーティング剤」を開発するという今回の共同研究は、ずっと前からあってもおかしくはない研究テーマだったのですが、それが現実にはなかったのです。今回の共同研究における岐阜大学の役割は、「滑る」という行動が動物の身体と心に与える影響を科学的に明らかにすることです。そして動物にも優しい生活環境を作るために、今までになかった床用コーティング材を開発することを目指しています。

メディア掲載

▽新聞掲載:科学工業日報 2017年4月13日号