自立起立移乗補助具の動作分析

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ラ・クリップ

株式会社東海技研工業

中津川市中津川932-325 資本金:1000万円 従業員数:87名

岐阜大学大学院医学系研究科関節再建外科学先端医療講座
青木隆明 特任准教授

共同研究にいたったきっかけ

弊社の主業は配電盤・板金部品加工等でありますが、関係者の実父が股関節圧迫骨折により入院、その後退院するも在宅介助が全介助であったことを受け、その事態を改善すべく、弊社の板金加工技術を活かして対応策を考案しました。試作品でトライしたところ即時に自力で起立し、車椅子への移乗も行えたことから開発を開始しました。開発を進める中でウェルフェア等の展示会に出展した際、福祉業界における専門家に対し新たな福祉用具の特長を理解して頂くには専門機関によるエビデンスが必要との声があり、岐阜県経済産業センターへ相談したところ、岐阜大学医学部附属病院の青木隆明特任准教授をご紹介いただき、動作分析を依頼することになりました。

共同研究の内容・成果

従来の据置型手すりはその殆どが「押し型」であり、本製品の「引き型」の手すりは介護用具製品群の中で在りそうで存在しなかった用具であるため、使用時における動作が従来の手すりと比較してどのような違いが在るのかが全く不明でした。そこで、「ベッド手すりの違いによる立ち上がり動作の解析」という内容で、押し型・引き型の二種類の起立補助具について動作のVICONによる解析と同時に、表面筋電図により動作時の大腿四頭筋の活動性を計測して頂きました。その結果、引き型では直線的な重心移動がみられるのに対し押し型では重心の大きな弯曲移動がみられ、又、表面筋電では引き型の方が体重移動が効率的であるため、活動性が平均12.2%減少していることが判明しました。結果、引き型の手すりの方が押し型に比べ、力の伝達効率、活動性においても効率的であることが確認されました。本分析成果をもって様々な施設や福祉用具取扱業者への「ラ・クリップ」の説明は、科学的根拠をもって行うことが可能となり、業界における専門家もその効率性を一層の理解をもって体験して頂けることとなりました。また、実際にラ・クリップを活用して頂いている要介護者の方からは、起き上がりや立ち上がり、立位保持に移乗動作が大いに楽になり無くてはならない補助具になった、介助者の皆さんからは介助が楽になり本人もやる気が出てきたように思うなど、ラ・クリップの効率性を改めて認識している次第です。

コメント

ご担当者様:株式会社東海技研工業 代表取締役 安江宏様

動作分析を依頼させて頂いた時点では、従来の手すりと比較して立ち上がりが効率的で楽に出来るという感覚的な自信はありましたが、科学的な根拠は何も無く不安でした。大学では「押し型」と「引き型」という区分をもって動作分析をして頂き、科学的にその効率性が立証されたことは開発担当者全員の大きな自信となり、様々な説明会等において専門家関係者に納得して頂くことが出来、無くてはならないエビデンスとなりました。

岐阜大学大学院医学系研究科関節再建外科学先端医療講座 青木隆明

共同研究において、高齢化社会で、日常生活動作の自立を促し健康寿命を延ばすため、様々なベッド柵や手すりがある中で、主に引き型と押し型の2種類による立ち上がり動作の効率性を検討し、ラ・クリップのような引き型の移乗補助具は、動作解析により、直線的な重心移動がみられ、押し型では重心の大きな弯曲移動がみられ、表面筋電では引き型の方が、体重移動が効率的であるため活動性が低いことがわかりました。このことは引き動作の方が下肢への筋肉の活動性が低く、下肢筋力の利用が効率的であることが示唆されます。ラ・クリップは引き型の中でも、より力の伝達効率、筋肉の活動性においても効率的であるという結果が得られました。

メディア掲載

CBC「チャント」2020年11月26日、monoマガジン2019年10月2日号、岐阜新聞2019年11月13日、中部経済新聞2019年11月29日、中日新聞2020年5月20日、他多数