�名河川水温モデルの開発と水温への気候変動影響 私の専門は水文学(すいもんがく)です。本プロジェクトでは、長良川流域を含む木曽三川流域の水・物質動態を記述する水文モデルを発展させ、源流から本流に至る河川水温のモデルを開発しています。水温上昇は、気候変動の影響として世界的には問題視され研究が進んでいますが、雨が多くふることで水温変動が激しい日本では見過ごされてきた温暖化影響の一つです。気候変動の影響が、山地から平野に至る水・物質動態に与える影響を水温も含めて分析することにより、把握しづらい流域スケールでの温暖化影響について定量的な分析を可能としていきます。RESEARCH CONTENT OF MEMBERS108PROJECT No.43KEY WORDS長良川/アユ/世界農業遺産/気候変動影響/環境DNA/水文モデル/ステークホルダー協働モニタリング/本研究プロジェクトは、岐阜大学・岐阜県水産研究所・(国研)土木研究所・(国研)国立環境研究所が関わる共同研究であり、環境省環境研究総合推進費(2020~2022年度)「水防災・農地・河川生態系・産業への複合的な気候変動影響と適応策の研究」及び(2023~2025年度予定)「長良川流域における森・里・川の気候変動適応が中山間地域の生業の持続性とウェルビーイングに与える影響の研究」により取り組んでいるものです。適応策の共創環境社会共生体研究センター原田 守啓副センター長環境社会共生体研究センター 永山 滋也特任助教応用生物科学部生産環境科学課程環境社会共生体研究センター 大西 健夫教授メンバー長良川流域全域を対象としたアユ環境DNA分析と水温影響の研究 私の専門は河川生態学・応用生態工学です。本プロジェクトでは、水に含まれる生物のDNA量を分析する環境DNA分析手法を適用し、長良川流域全体をカバーする42地点ものモニタリング地点で2020年、2021年に2週間ごとのアユ環境DNA濃度を計測してきました。その結果、洪水や渇水、水温の変化などに応じて長良川流域全体をダイナミックに動き回るアユの姿が捉えられました。この結果を、生態適地モデルに落とし込むことにより、過去から将来予測される温暖化によって、長良川のアユの生活史がどのように変化していくのかを、水文学、河川工学など幅広い分野の研究者との協業により解明します。プロジェクトメンバーが取り組んでいる研究温暖化が洪水・渇水の規模頻度に与える影響の分析 私の専門は河川工学・応用生態工学です。河川の治水と河川環境保全を両立するための研究開発や、地域の自然環境システムに対する気候変動影響について研究してきました。 本プロジェクトでは、日本三大清流の一つとされてきた長良川流域と、そのシンボルであるアユに及びつつある温暖化の影響のうち「洪水・渇水の激化」と「水温上昇」の2点に着目し、流域全体を対象とした水文モデル解析、河川内の流況解析、現地調査等を併用して分析しています。研究成果をステークホルダーの皆様と共有し、効果的な適応オプションが複数抽出されつつあります。
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